ごあいさつ

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 南紀高等学校周参見分校は、昭和29年4月、田辺高等学校定時制周参見分校として開校されました。その後、昭和38年4月、田辺高等学校定時制が南紀高等学校として独立するに伴い、南紀高等学校周参見分校として歴史を刻んで参りましたが、この度、平成28年3月31日をもちまして閉校することとなりました。

周参見分校は、開校以来62年にわたり定時制教育を担い、この3月1日の卒業式で卒業した生徒を含め、420名の卒業生を輩出してきました。本校の卒業生の多くの方々が、地元を中心として各界でご活躍されておられることから、学校として地域の発展の一翼を担ってこれたのではないかと思っております。

 分校の歴史を、当時の文集「なみなぎ」や記念誌などによって顧みますれば、昭和29年4月17日、地元の強い要望や町内の各方面の精力的な働きかけにより、周参見小学校に田辺高等学校定時制周参見分校が開校され、待ち望んだ48名が入学されたとあります。昭和31年には周参見中学校に学舎を移し、開校以来、生徒の学習意欲も高く、また、地元からの温かい支援に支えられ、多くの方々がこの分校で学び、巣立って行かれました。昭和30年代は、平均して70人前後の在籍生徒数を数えています。最も多いときで95名もの在籍生徒数を数えました。

しかし、その後の高度経済成長や教育環境の変化により高校進学率も90%を超えるようになり、全日制高校への進学志向が高まる一方、定時制課程への進学者の減少が問題となってきました。

 こうした経過をたどり、昭和56年度末には富田分校、昭和57年度末には白浜分校と相次いで分校が閉校を余儀なくされていきましたが、そんななかでも、周参見分校は、同窓会や地域の厚い支援とともに、教職員の定時制教育への熱い思いのもと、定時制高校に求められる、従来からの勤労青年のための後期中等教育機関としての役割にとどまらず、多様な生徒の多様な学びのニーズに対応しながら、なんとか分校の学びの火を消すことなく存続してまいりました。特に近年では、少人数ゆえの利点を生かした、アットホームで生徒一人ひとりに寄り添った指導により、十分とは言えませんが、生徒の成長を促し、進路保障につないでいくことができてきたのではないかと思っています。

 その間も、分校存続のため、地域の多くの皆様とともに取り組んで参りましたが、入学者選抜検査の受験者数の確保が益々困難になり、平成25年度から募集を停止するとともに、平成27年度末での閉校が決まり、長年、この周参見分校が担ってきた定時制教育は、62年の幕を下ろすことになりました。  今後は、田辺の本校で、周参見分校が担ってきた定時制教育、その精神を引き継いで、皆様方のご理解、ご支援をいただきながら取り組んで参りたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 最後になりましたが、この62年間の長きにわたり、厚いご支援をいただき、大過なく無事にこの周参見分校を運営をすることができましたこと、県教育委員会、すさみ町教育委員会、歴代の校長先生や分校主任・教頭先生、旧職員の皆様、そして育友会、同窓会、教育振興会の皆様方に、深く感謝を申し上げますとともに、なにより、温かく見守り、多大なご支援をいただきましたすさみ町と町民の皆様方に、厚く御礼を申し上げて、挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

                              

平成28年3月31日
和歌山県立 南紀高等学校
校長 坂田 和彦